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[前編] 2026年版「デジタル推進状況」企業アンケート結果まとめ
~企業におけるDX推進の現状と課題~

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目次

はじめに

DXは2004年に初めて提唱され、日本でも2018年頃から経産省を中心として国を挙げての取り組みとなり、2021年にはデジタル庁が発足しました。それから歳月が流れ、2026年となった現在、各企業におけるデジタル推進状況は、一体どのような局面を迎えているのでしょうか?

IIMヒューマン・ソリューション株式会社(以下IHS)は、企業でDX推進の中核を務める方々をゲストにお迎えするデジタル推進サロン「AOYUZU –Salon de Digital-」を継続して開催してまいりました。今回は、第14〜17回開催にてご参加いただいた方々へのアンケート結果をもとに、最新の「企業におけるDX推進の現状と人財育成を巡る課題」としてまとめ、考察したものを本コラムにてご紹介いたします。

なお、本記事は全2回に分けてお届けします。前編となる今回は、全社的な「DX推進状況」「DX推進に関する課題」「DX人財育成の取り組み」の3つの調査結果を取り上げ、組織の足踏みを引き起こす本質的な要因を考察します。組織のDX化を推進するリーダー層、経営層の皆様に少しでも役立つ内容になっていれば幸いです。それではご覧ください。

【調査結果1:DX推進状況】「着手9割」の高止まり——体制構築の完了と、実質的な進展の足踏み

DX推進状況

2024年〜2026年の推移が示す客観的事実

何らかの形でDXやデジタル推進に取り組んでいる「着手企業」の割合は、2024年の調査から2026年に至るまで、一貫して「約9割」という非常に高い水準を維持したまま、横ばい・高止まりの推移を見せていると伺えます。

特に2026年の最新データに目を向けると、「専門組織を設け、進行している」あるいは「DXの推進に着手している」と回答した企業の割合が大多数を占めており、2024年時点と比較してもその構成比に大きな変化はないと考えられます。このデータが意味するのは、日本の多くの企業において、専任担当者の任命や専門組織の立ち上げ、あるいは初期のツール導入といった外側の「体制づくり(形づくり)」は、一通り完了している状況であると推察されます。

しかし、この数字をポジティブにだけ捉えるのは留意が必要と考えられます。数年単位の長期的な推移を見つめ直したとき、これだけ多くの企業が「着手」していながら、実質的な進展フェーズにおいては多くの企業が「足踏み状態(形骸化)」の状況にある実態が窺えます。

経営視点×現場視点の深掘り:個別最適にとどまる背景と、経営層・現場の認識のギャップ

なぜ体制が整っているにもかかわらず、組織は足踏みしてしまうのでしょうか。そこには経営層と現場の間に横たわる、深い認知のギャップが存在すると考えられます。

経営層やIT部門トップは、定例報告に並ぶ「9割のプロジェクトが進行中」という記号を見て、「我が社のデジタル化は順調に進んでいる」と安心感を抱きがちです。しかし、現場の実態は、「Microsoft 365の導入」や「特定の部署だけで使われる個別アプリの活用」といった「部分最適(ツールの導入)」の段階で止まってしまっているケースが散見されると窺えます。

経営層が本来求めているはずの「投資対効果(ROI)」やビジネスモデルの変革、全社最適による価値創出という視点と、現場の「目の前の日常業務をデジタルに置き換える」という視点が分断されている状況が見受けられます。「箱(組織)」を作ったことで満足し、共通のゴール(全社最適)が見えないままツールだけが増えていくことが、2026年の組織に深い足踏みを引き起こしているボトルネックの一つであると考えられます。

参考:実施可能な検証ステップの一例

この足踏み状態から抜け出すにあたり、組織として実施可能な取り組みの一例として以下のようなステップが考えられます。参考としてご覧ください。


  • 「形(手段)」から「実(成果)」への評価指標シフト:
    「担当者を何人置いたか」「どのツールを導入したか」という手段のカウントを社内の報告書から見直し、「その取り組みによって現場の業務時間が何時間創出され、それによってどのような新しい動き(価値創出)が生まれたか」という時間創出・価値創出ベースの測定指標(KPI)への見直しを検討することが考えられます。
  • 経営陣による現場キーマンへの「1on1レビュー」の実施:
    経営陣自らが現場へ赴き、デジタル推進のキーマンとなっている社員に対し、「現在のデジタル化によって、本当に仕事が楽になっているか? 顧客への価値創出に繋がっている実感はあるか?」を直接ヒアリングする対話の場を設けることも、変革を再始動させる契機になると考えられます。

【調査結果2:DX推進に関する課題】業務プロセスの壁——なぜ現場の「抜本的な改革」は頓挫するのか

DX推進に関する課題

前章では、2026年現在において「体制(形)」は整ったものの、実質的な進展が足踏みしている現状をお伝えしました。では、なぜ具体的にプロジェクトが前に進まないのか。その要因が「DX推進に関する課題」のデータから見てとれます。

2026年データが示す現場の課題

アンケートにおいて「DX推進に関する課題」を尋ねたところ、2024年から2026年にかけて一貫して最大の障壁として挙げられているのが「デジタル人財の不足・育成が進んでいない」という人財面の課題であると窺えます。

しかし、注目すべきはそれに次ぐ項目です。2026年の最新データでは、「業務プロセスの抜本的改革が進まない」、そして「既存ITシステムの複雑化・ブラックボックス化」という業務実務に直結する課題が、現場を阻む強烈なブレーキとして上位にあがっている状況が見て取れます。2025年以前のデータと比較しても、この「業務のブラックボックス化」や「改革の停滞」を訴える現場の声は増大傾向にあり、ツールを導入しようとした段階で、既存の古い業務プロセスそのものが課題として顕在化していると考えられます。

経営視点×現場視点の深掘り:挑戦が加点されない評価制度と既得権益の摩擦

「人財が足りない」「業務プロセスが複雑すぎる」——現場から上がってくるこうした報告を、経営層は「現場のスキル不足やマンパワー不足」として受け止めてしまいがちです。しかし、そこにはより深層的な要因が存在すると推察されます。

現場が「抜本的な改革が進まない」と感じる背景には、社員の能力の問題だけでなく、企業の「評価制度が減点主義のまま更新されていないこと」が影響していると考えられます。長年染み付いた従来のやり方を壊して新しいデジタルプロセスに挑戦することは、現場にとって心理的・実務的なリスクを伴います。「挑戦しても失敗したら減点される」「新しいシステムを入れても評価(給与)は変わらない」という環境下では、現場が従来の慣習を選択するのは組織行動として自然な反応であると窺えます。むしろ「現行業務の手を抜いて別のことをしている」と周囲から見なされるケースさえ存在すると推察されます。

さらに、「業務のブラックボックス化(属人化)」が解消されない背景には、現場の心理的な摩擦(既得権益の防衛)が潜んでいると考えられます。「この業務はAさんしか分からない」という状態は、裏を返せばその社員にとって「社内での存在価値やポジションを守るための防衛策」になっている側面が窺えます。業務をオープンにしてデジタル化・自動化することは、自らの役割が脅かされる不安に繋がりやすいと推察されます。現場のカルチャーや心理的摩擦への配慮を欠いたまま「DX推進」を掲げても、業務プロセスの開示が進まず、改革が停滞する要因になると考えられます。

参考:実施可能な検証ステップの一例

現場の心理的・組織的ブレーキを緩和し、抜本的な業務改革へ舵を切るために、組織として実施可能な取り組みの一例として以下のようなステップが考えられます。参考としてご覧ください。


  • 業務プロセスの「棚卸し・フロー図化」を事業部門の最重要KPIにする:
    ブラックボックス化を解消するため、メンバーの業務手順を可視化(フロー図化)するタスクを推進することが有効と考えられます。その際、IT部門に一任するのではなく、業務の全貌を知る「事業部門(現場)の最重要評価KPI」に設定し、可視化をやり遂げた部門長やメンバーが正当に評価される仕組みを整えることも業務改革への第一歩につながると考えられます。
  • 「引き継ぎ可能性(再現性)」を最大評価する加点型評価の検証:
    「自分の業務をマニュアル化・デジタル化し、他人にそのまま引き継げる状態(再現性のある状態)にする」取り組みを、評価する仕組みを検討することで、現場が自発的に変革に参加しやすい環境づくりができると考えられます。

【調査結果3:DX人材育成の取り組み】社内教育の落とし穴——「各部門任せ」が引き起こす組織のサイロ化

DX人材の取り組み

前章までの体制構築や業務プロセスの壁を踏まえ、ここでは「人財の育成体制」を巡る組織の構造問題へと切り込んでいきます。最新の3枚目のグラフ「DX人財育成の取り組み」から、経営と現場を繋ぐ文脈を掘り下げてまいります。

2024年〜2026年の推移が示す客観的事実

人財の育成・確保に対する企業の投資姿勢をめぐり、この3年間で示唆に富む変化が起きていると伺えます。

2024年の調査時点では、「全社的に取り組んでいる」と回答した企業の割合が60%以上と過半数を大きく超えていました。しかし、2025年、2026年と年を追うごとにその割合は減少傾向を示し、2026年の最新データ(16+17回 n=63)では50%を割り込む水準まで低下している実態が見て取れます。

その一方で、「計画はあるが全社には至っていない」、および「各部門に任せている」という回答が増加傾向を示しています。このことから、2026年現在、多くの企業においてDX人財の育成体制が「全社共通のインフラ」から、「各事業部門の個別最適(分散型)」へと移行している実態が窺えます。

経営視点×現場視点の深掘り:各部門主導の育成体制が生みやすい課題

全社的な教育制度の整備には、方針の策定や各部門の課題の洗い出しなど、多くの調整コストと時間を要します。そのため、経営層や人事部門は「まずは現場主導で、できるところから始めてほしい」と考え、「各部門任せ(自助努力)」の形を選択することがあると考えられます。しかし、そこには組織運営上の課題が生じやすいと推察されます。

育成を「現場の予算」や「各部門の自助努力」に委ねてしまうと、日々の業績やリソースに余裕のある先進的な部門のみがデジタル化を進め、目先の数字に追われる部門やデジタル化への抵抗感が強い部門が置き去りにされる「組織の二極化」が生じやすくなると考えられます。

現場の実務視点から見れば、部門ごとに異なる思想で人財が育ち、独自のツールや個別最適のシステムが乱立することになりかねません。これは、全社でのデータ連携や共通インフラ化を阻む、新たな「部門間の壁(サイロ化・技術的負債)」を生み出す一因になると考えられます。経営層が「全社最適のシナジー」を望んでいるにもかかわらず、人財育成を現場へ過度に依存した結果、組織のサイロ化という逆効果を生み出している現状が推察されます。

参考:実施可能な検証ステップの一例

人財育成における組織の分断を防ぎ、全社一丸となったデジタル変革を進めるにあたり、実施可能な取り組みの一例として以下のようなステップが考えられます。


  • デジタル人財の育成予算を各事業部門の損益から切り離し、「中央集権化」する:
    人財育成のコストを各部門の財布(部門損益)から切り離し、全社共通の投資として一元管理することで、目先の業績に左右されず、全社一斉に育成の機会を確保できると考えられます。
  • 経営陣自身による「育成すべきデジタル人財の定義」の言語化と検証:
    経営陣自らが「自社において、今期最優先で育成すべきデジタル人財とは、具体的にどの業務をどう変える人のことか」を、3つのシンプルな言葉(定義)へと落とし込んで言語化し、全社に向けて発信することで、各部門が同じ方向を向いて動きやすくなると考えられます。

まとめ:体制構築のその先へ——「形」から「実」を動かす組織への転換

本稿(前編)では、最新のアンケート結果から「DX推進状況」「DX推進の課題」「DX人材育成の取り組み」という3つの調査データを軸に、企業の現在地を見てきました。

見えてきたのは、「着手9割」という数字が示す通り、多くの企業で専任組織やツールの導入といった「外側の体制づくり(形)」は一通り完了しているという事実です。しかし同時に、現場では業務プロセスの改革や人財育成の全社展開が課題として残っています。

後編(調査結果4〜5)へ向けて

では、実際に現場でスキルを発揮し、変革を担う「人財」をいかにして育て、実務で成果を出させるべきなのでしょうか。

後編では、残る2つの重要データである「調査結果4:DX人材育成の取り組み状況(手法の限界)」および「調査結果5:DX人材育成への課題(経営の関与)」を深掘りします。そして、参加者の声やガートナーの最新調査を踏まえた考察をお届けします。

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