2022年11月末のChatGPT登場を皮切りに、生成AIのビジネスにおける利用が急拡大しています。
生成AIは「プロンプト」と呼ばれる指示文に応答して、テキスト、画像、または他のメディアを生成することができる人工知能システムの一種です。生成AIは、アート、執筆、ソフトウェア開発、ヘルスケア、金融、ゲーム、マーケティング、ファッションなど、幅広い業界で応用できる可能性があります。
しかし、生成AIを訓練する目的での著作物の不正な利用や人をだましたり操作したりするフェイクニュースの作成など、生成AIの悪用の可能性も懸念されています。
企業の競争力を考える上では、生成AIがどのようにDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献できるのか、生成AIの急速な進化が新しいビジネスモデルをどのように生み出す可能性があるのか、どのような業界にあっても注視していく必要があります。ここでは、2023年にニュースリリース等で公表された事例をもとに、生成AIをビジネスに活用しているユースケースをご紹介します。
伊藤忠商事の事例
伊藤忠商事株式会社は2023年7月25日に、ChatGPTを含む生成AIの本格展開を約4200人の社員に向けて開始しました。同社は早くから北米で話題になったChatGPTに着目し、生成AIのビジネスへの影響を検討していました。3~4月ごろに社内サービス化を検討し、株式会社ブレインパッドとの共同で「生成AI研究ラボ」を設立しました。
「生成AI研究ラボ」では、各社の知見やノウハウを集め、システム開発、伊藤忠社内での生成AIの検証を行い、利用状況の分析やシステムの改善を目指しています。7月の導入時には、社内のビジネスチャット「Benefitter」のUIを活用し、ChatGPTとAPI連携しました。利用する社員が期待する回答を得られるように、適切なプロンプトに関するマニュアルの提供や勉強会も実施しています。
伊藤忠では、プラグインによる機能拡張も想定しており、伊藤忠社内の業務システムとの連携を進め、伊藤忠に特化した生成AIの実現を目指しています。契約書や規程類、商社としての貿易業務に関する各種書類などのデータをAPIでGPTと連携させることも予定しています。
パナソニックの事例
パナソニックコネクトは、2023年2月17日に「ConnectAI(旧名称:ConnectGPT)」を約1万2500人の国内全社員に向けて導入しました。このサービスは、「Azure OpenAI Service」を利用して開発されており、入力した情報の二次利用や第三者提供がされない仕様で、入力した情報は一定期間を過ぎたら消去するなど、セキュリティ面に配慮されています。
ConnectAI(旧名称:ConnectGPT)の導入プロジェクトは2022年10月から始まり、一般公開されているChatGPTと同様に使えますが、社内活用の利便性を向上するためパナソニックコネクト独自の機能も搭載しました。これには、専門的なアドバイスやITサポートなど15個の活用方法のサンプル提供、自動翻訳機能、回答の調整機能、社員による回答評価機能、業務改善アイデア共有機能などが含まれます。導入から3か月間で、約26万回の利用があり、1日当たりの利用者は5800人に上ったとのことで、短期間に業務に欠かせないツールとなっているようです。
その後、ConnectAI(旧名称:ConnectGPT)をベースに全社版の環境を構築し、4月14日より「PX-AI(旧名称:PX-GPT)」として、パナソニックグループの国内全社員約9万人に向けて展開しました。10月以降は、カスタマーサポートセンターの業務への活用も目指していると発表しています。
サイバーエージェントの事例
株式会社サイバーエージェントは、2023年4月、インターネット広告事業本部において、ChatGPTを活用し、デジタル広告のオペレーションにかかる作業時間を大幅削減する「ChatGPTオペレーション変革室」を設立したことを発表しました。
自動回答や海外拠点とのコミュニケーションなど社内コミュニケーションの補助を中心に作業時間の効率化を図り、月間で広告オペレーションにかかっている総時間約23万時間のうち30%にあたる約7万時間の削減を目指しているとのこと。
また、2023年5月18日には、バナー広告のキャッチコピー文案を自動生成する機能を開発。独自開発した大規模言語モデル(LLM)とChatGPTを組み合わせ、自然かつ的確なコピー文を生成できるとのことで、従来よりも素早くキャッチコピーを作り、その効果を試すことができるようになったといいます。
同年10月には、生成AI活用推進組織「AIオペレーション室」の新設も発表しました。同社全社員の生成AIに関するリテラシーの向上や、生成AIを業務活用するための環境整備が目的とのことで、2026年までに現在のオペレーション業務の6割削減を目指しています。
その他生成AI活用方法
その他にも、ChatGPTをはじめとする生成AIは様々な業務への活用が期待されています。たとえば、以下のような業務での活用が考えられます。
- 記事のライティング:オウンドメディアなどの記事作成にChatGPTを利用できます。例えばITmedia NEWSは、記事執筆・編集フローにChatGPTを組み込み、効率化を図っています。
- 文章の要約:会議の議事録などの長文をChatGPTで要約し、重要なポイントを抽出できます。例えば、インプレスのウェブメディア「PC Watch」では、ChatGPTを活用した自動要約機能を試験的に導入しました。
- リサーチ業務:ChatGPTは市場や競合に関する情報収集に有効です。例えば、新しい市場への進出に際して、市場の概要や商品・サービスを売るためのポイントを事前に把握するのに役立ちます。
- 文章の添削・校正:ChatGPTは文章の添削や校正に活用できます。長い文章を誤りがないように修正してもらい、修正した箇所を一覧で出してもらう、といったことが可能です。
- 言語翻訳:海外とのメールやリサーチでの外国語文献の翻訳にも使えます。自分の英訳をより自然な英語に修正してもらったり、相手に合わせてフォーマルさの度合いを変えて書き換えてもらう、といったことも可能です。
- メール文章作成:メールの文章作成にChatGPTを活用することで、ビジネスコミュニケーションの効率化が図れます。相手からのメール内容に基づいて返信を生成したり、営業メールを作成したりするのに便利です。
- コード生成:ChatGPTはプログラミングのコード生成にも使えます。指定したプログラミング言語でコードを生成し、具体的な例に基づいて高精度なコード生成が可能です。
本記事のまとめ
大手企業での生成AI活用の取り組みが目立つ一方で、まだ活用に踏み出せていない企業、組織も多くあります。その原因は、セキュリティ面への懸念と、自社における活用イメージが湧かないことではないかと思います。
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