2月上旬にシンガポールを弊社マネージャー数名と一緒に訪問しました。日本企業の現地法人にIT活用状況をヒアリングし、関連サービスのニーズを探ることが目的です。シンガポールまでの飛行時間は直行便でおよそ7時間、時差はわずか1時間。それだけ近い国ですが、実際に訪問するとやはり違いに気づかされます。私が得たエピソード2つを共有させていただきます。
関 マサエ(当社IHS 代表取締役社長) 2025年3月18日
GDPは日本の2倍、先進国シンガポールが進める「デジタルアクセス」
一つは「シンガポール政府が社会的弱者や低所得層に”無料”でスマートフォンを支給している」という話です。現地での移動に協力いただいたドライバーの方からから聞きました。「そこまでする!?」と驚いたので調べてみると、背景にシンガポール政府が進める「スマートシティ構想」があるようです。構想を具体化するため、同国政府は医療・福祉・税金・公共交通・デジタル決済といった行政を含む各種サービスをデジタル化しつつあります。

しかし、そのためにはすべての市民にデジタルリテラシーを身につけてもらう必要があります。そこで2020年、Digital Access Programme(DAP)という取り組みを開始しました。このプログラムは、特にデジタル化の恩恵を受けることが難しい低所得層や高齢者に焦点を当て、デジタルツールやインターネット接続を手に入れることができるよう支援するものです。
DAPを所管するIMDAのWebページには「デジタルアクセスは、すべての国民が日常生活に不可欠な行為(情報の取得、オンラインでの取引、社会的つながりの維持など)を行うために必要なものであり、社会的および経済的参加(リモートでの作業や学習など)をサポートします。~中略~。DAPはそのための資金がない脆弱層の間でデジタル導入を促進し、費用負担の格差を縮小することを目指しています」とあります。
つまりデジタルアクセスが目的なので必ずしも無料配布ではなく、補助金や企業による寄贈もあると思われます。それに加えてDAPの一環で、スマートフォンの使い方やサービスの利用に関する講習などのサポートも無償で提供されているとのことです。当然、デジタルリテラシー向上による詐欺防止などの安全性も確保することにも注力しています。
現地で聞いた話では、想定しなかったデジタル化の恩恵もあるようです。一例が日本と同様に社会問題になっている高齢化に関わる問題。高齢者にスマートフォンを保有してもらうことでデータが集まり、行政が生活状況を従来に比べてリアルに把握できるようになることが考えられるのです。限界はあるにせよ孤立化を防げますし、政府のスタッフが訪問したり電話したりして調査するよりも効率的です。日頃から位置情報などの活動状況を確認しておけば、万一の際にもフォローする時間や人員を効率的に配置できると思います。
これは企業に置き換えると、利用者に高度な操作を求めるよりも、まずは使いやすい環境を提供し、データを収集・分析することで収益向上と効率化を狙う戦略と似ています。この結果として、シンガポールの一人当たりGDPは約7万2000米ドル(約1070万円)であり、日本の約3万9000米ドル(約580万円)を大きく上回っています。ちなみに、日本では110円のマクドナルドのコーヒーは、3シンガポールドル(約330円)でした。日本もデータ活用のスピードを上げて、GDPの向上を期待したいと思います。
訪問先すべてがPower Platformを活用してローコード開発
もう一つのエピソードは、企業訪問でMicrosoft 365に含まれるPower Platformの利用状況に驚かされたことです。金融・エネルギー・運輸・製造業の4社を訪ねたのですが、どこもPower Platformを最大限活用していました。例えば金融業では新規顧客開拓の際にBIを活用して資産状況を分析し、営業活動に役立てています。
エネルギーではシステム担当者から話を聞きましたが、Power AppsとTeamsを使用してリアルタイムでデータ入力し、資産台帳と紐付けて管理することで障害対応などの作業の効率化を図っています。運輸業では、Power Automateを活用してデータを収集・処理しており、業務の状況をリアルタイムで把握できるようにしています。
なぜそうなのか、少し踏み込んで理由を尋ねたところ、「IT予算が限られているため、Power AppsやPower Automateを自分たちで使いこなすしかない」、「それなりのシステムを開発するには本社との調整が必要だが、その時間とコストを削減できる」「自分たちでも業務を自動化できるし、使いやすいように継続的に改善できる」といった回答をいただきました。
各企業のPower PlatformやMicrosoft 365の表示は英語ですが、ライセンスの購入は日本側でグローバル契約されているため費用面でもメリットがあるようです。シンガポールの現地法人の皆様は、日本からの指示と現地でのローカル事情の間に挟まれながら、工夫を凝らしてIT化を進めていると感じました。
一方で「Power Platformを使いこなせない」、「使える人が限られる」といった問題や苦労も少なからずあるようです。IIMヒューマンソリューションは現地法人がないのですが、今日ではリモートでもお手伝いやサポートが可能です。そのための体制を整えたいと思いました。
まとめ
このように、シンガポールではデジタル化を積極的に進め、その恩恵を最大限活用して業務効率化を図る姿勢が強く見られました。弊社としてもこうしたシンガポール企業の成功事例を参考に、Power Platform・Copilotを含むデジタル活用を支援していけるように技術テストと検証を進めていきます。そして今回お世話になった海外現地の方への遠隔サポートができるよう、体制を強化してまいります。

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