2026年03月
生成AIで社内問い合わせを再構築
既存チャットボットからCopilot Studioへの完全移行事例
企業におけるDX推進やAI活用が進む中、三菱商事テクノス株式会社様では、既存チャットボットの契約期限をきっかけに、
社内FAQ環境の見直しを検討されていました。
そこでMicrosoft Copilot Studioを活用し、より柔軟で拡張性のある社内問い合わせ対応基盤の構築に取り組むにあたり、IHSが導入支援を行いました。
企業情報
| 会社名 | 三菱商事テクノス株式会社 |
|---|---|
| 業種 | 卸売業(工作機械・産業機械の専門商社) |
| 従業員数 | 328名 |
| 所在地 | 東京都港区芝浦3丁目1番21号 田町ステーションタワーS 13階 |
| 事業内容 | 三菱商事テクノス株式会社は、金属加工機械を中心とした工場内設備や自動化装置の販売・システム提案を行う専門商社です。車両電動化部品組立装置、二次電池・半導体・電子部品製造装置など先端分野向け設備の提供をはじめ、省エネ・環境関連設備、物流・プラント分野まで幅広いソリューションを展開しています。 |

背景
三菱商事テクノス様では、情報システム部門を中心に、総務・人事・法務などの社内問い合わせ対応を効率化するため、従来よりチャットボットを活用されていました。全社展開を進める中で業務効率化を目指していたものの、実際には利用が限定的で、十分に活用されているとは言い難い状況が続いていました。
既存の仕組みは、一問一答を手動で登録する形式であり、語句の違いによって検索結果が表示されないなど、回答精度の向上に限界がありました。想定外の質問に対しては意図しない回答が表示されることもあり、「結局電話で問い合わせた方が早い」と感じられる場面も多かったといいます。
また、ナレッジの追加・修正には継続的な手作業が必要で、メンテナンス工数が増加していく一方、利用率の向上にはつながりにくいという課題も抱えていました。
こうした背景のもと、生成AIを活用したCopilot Studioに着目し、社内での検証を開始。すでに構築に取り組まれていたものの、業務に適用できる設計や操作理解に課題を感じていました。
そのタイミングで弊社が開催しているCopilot Studio体験セミナーにご参加いただき、ハンズオン形式で実際の業務に近い操作を体験されたことで、具体的な活用イメージが明確になりました。その後、既存チャットボットの契約更新のタイミングも重なり、置き換えを含めた本格的な再設計・再構築へと舵を切られました。
システム移行の課題
既存チャットボットは社内問い合わせ対応の効率化を目的に全社展開されていましたが、期待したほど利用が伸びず、運用面でいくつかの課題が顕在化していました。
主な課題は以下の通りです。
- 問い合わせ内容と登録キーワードが一致しない場合、回答が表示されない
- 一問一答形式のため、ナレッジ追加・修正の工数が大きい
- 回答精度を高めようとするほど、メンテナンス負荷が増大
- 利用状況と運用負荷のバランスが取れない
Copilot Studioへの移行を検討する中で、単なるツール変更ではなく、「使われる仕組み」として見直すことが重要だと考えられていました。
新システム構築における当社の取り組み
既存チャットボットからの移行可否を判断するためには、単にエージェントを構築するだけでなく、「実運用に耐え得る回答品質が確保できるか」を検証することが重要でした。
そこで当社では、精度と再現性の向上を最優先に据えた設計・構築を行いました。
まず着手したのは、既存ナレッジの整理です。対象となった資料は、PDF・Excel・CSVなど複数形式が混在する約30ファイル・700ページ規模。これらを生成AIが適切に参照できるよう、構造を見直し、AIが読み取りやすい形式へ再整理しました。
そのうえで、以下の取り組みを実施しました。
- 既存FAQデータを、AIが読みやすい構造化された記載形式および一問一答形式のファイルへ再編集(投稿後に自動整形される形式へ変換)
- 類似語・曖昧表現によって誤ったナレッジを参照しないよう、ナレッジ側に補足情報を追加
- 回答末尾に参照ナレッジID・ドキュメントリンクを必ず表示するルールの設定
- 誤回答の可能性が高い内容については、無理に回答させず適切な案内へ誘導する設計
- Teams 環境との連携による利用導線の整備
- 運用手順書の整備(ナレッジ更新方法・メンテナンス方法の明確化)
エージェントの基本構築自体は短時間で実現可能でしたが、工数の多くは回答品質の向上に充てられました。約100問規模のテスト問答を繰り返し実施し、回答精度と安定性を検証。実際の利用シーンを想定した調整を重ねることで、移行判断が可能な水準まで品質を高めました。
本プロジェクトにおける問い合わせ回答システムの構成は以下の通りです。Teamsを利用した問い合わせフローと、SharePoint上のナレッジ参照構成により、実運用を前提とした設計としました。
導入後の成果と変化
2026年1月中旬の全社公開以降、問い合わせ件数は増加傾向にあります。従来は月に数回程度の利用にとどまっていましたが、公開後は1か月あたり約150~160件のアクセスがあり、利用状況は明確に改善しています。
生成AI型エージェントへの移行により、語句の違いによる未回答が減少し、より自然な回答が可能となりました。また、回答末尾に参照ナレッジを表示する設計としたことで、利用者にとっての安心感も向上しています。
情報システム部門にとっても、誤回答が発生した場合の修正方法が明確になったことで、運用面の見通しが立てやすくなりました。完璧な精度を目指すのではなく、改善を前提とした運用が可能になった点も、大きな変化の一つです。
こうした成果を踏まえ、既存チャットボットからの移行判断が可能となり、新システムでの運用を継続していく体制が整いました。
完全移行を決断できた理由
既存チャットボットの契約期限が近づく中で、更新を続けるか、新たな仕組みに移行するかという判断が必要なタイミングを迎えていました。従来システムは利用が限定的で、メンテナンス工数に対する効果も十分とは言い切れない状況にあり、このまま継続するべきかどうかを改めて見直す必要がありました。
その一方で、Copilot Studioによる検証を進める中で、回答精度や再現性について一定の手応えが見えてきました。伴走支援を通じて設計や運用面の不安も整理され、「実運用に耐えられる」という感触を得られたことが、移行を前向きに検討するきっかけとなりました。
さらに、既存システムの更新コストと比較しても現実的な投資範囲であったことから、大きなリスクを伴う挑戦というよりも、合理的な選択肢の一つとして完全移行を判断されました。
今後の展望
今回の取り組みを通じて、回答精度を左右するのはツールそのものだけではなく、ナレッジの質と更新プロセスであることも改めて認識されました。生成AI型エージェントであっても、元となる情報の正確性や整備状況が、利用者の評価や定着に大きく影響します。
今後は、ナレッジの継続的な見直しと改善を前提とした運用を行いながら、回答品質のさらなる向上を目指していきます。また、評価の低い回答や修正が必要なナレッジを起点に、マニュアル更新やデータ整備を行う仕組みづくりも検討しています。
さらに、Power AutomateなどのPowerPlatformと連携することで、ナレッジ更新やファイル反映の自動化といった高度化も視野に入れ、問い合わせ対応からナレッジ管理までの運用をより効率的にしていくことを検討しています。
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