近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じたイノベーションや業務効率化があらゆる産業で進展する中、Microsoftが提供するPower Automate for desktopやPower Automateが注目を集めています。これらのツールは、業務プロセスを自動化するための強力なソリューションとして、多くの企業で導入されています。
そんな中、弊社が2021年より主催するPower Automateセミナーのアンケート結果から興味深い示唆が得られました。
この記事では、その結果をもとに、なぜこれらのツールが広がりを見せているのか、特に管理部門の参加が増加している背景について考察します。
Power Automate for desktopやPower Automateを業務で利用する人が増えている理由
アンケート結果で特徴的なのが「情報収集目的の参加」の割合が減少し、「業務で必要になったため自主的に参加」の割合が年々増えていることです。
これは、参加者自身の担当業務にどう活用できるのか具体的な方法を知りたいというニーズが増えていることを示しています。
ではなぜPower Automateを業務で活用する人が増えているのでしょうか?
弊社は以下の背景があると考えます。
1. コロナ禍の影響によるワークスタイルの変化
コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及し、Teamsのようなビジネスチャットが主要コミュニケーションツールになったことで、チームメンバーが非同期でも仕事できるようになりました。
一部の職種を除き、メールや電話よりもTeamsをはじめとするビジネスチャットを使うシーンが増えた(むしろ電話やメールはほぼ使わなくなった)と感じる方も多いのではないでしょうか?
非同期で業務をする場合、上司への各種承認依頼やメンバーへの各種通達はチャットに通知が飛び、急ぎの場合を除き受信者のタイミングで処理すれば問題ない形となります。
このように、サードパーティを含む業務系ツールのデータ連携の受け皿としてPower Platform製品群が注目されているのだと思います。
2. 業務プロセスの自動化による効率化志向
また、リモートワークの浸透により、多くの企業が業務プロセスの見直しを迫られました。これにより、従来の手作業や紙ベースのプロセスがデジタル化され、Power Automateがその解決策として採用される機会が増えました。
例えば「定期的な報告書の作成やデータ入力の自動化」「承認フローの効率化」といった、リモートでも進められる業務プロセスの自動化が進んでいます。自動化が進展することで、従業員の負担を軽減することにもつながります。
また、業務効率化が進展する大きなメリットは、時間を新たに創出できることです。
それにより、本来注力すべき重要な業務に時間を割けるようになります。これらの利点が多くの企業で認知され、Power Automateの利用が広がっています。
なぜ管理部門の参加が目立つようになったのか
アンケート結果のもう一つの特徴が、管理部門に所属する方の参加が年々増えていることです。
これには、以下の要因が挙げられます。
1. 管理部門だからこそ業務効率化への関心が高まっている
管理部門は、契約管理、経費精算、人事データ管理など、膨大な量の事務作業を担っています。これらの作業は繰り返し作業が多く、自動化による効率化の恩恵を受けやすい領域です。
そのため、管理部門が業務効率化ツールの導入を積極的に検討し、セミナーへの参加も増えていると考えられます。
2. 管理部門自らがDXを担当することが増えている
DX推進の専門部署がない企業では、管理部門がその役割を担うケースがあります。これにより、管理部門が「社内の非効率な管理業務を見直す」「管理部門のDX推進を自分たちで行う」といった動きをすることがあります。
セミナー参加を通じてツールの理解を深め、管理業務の効率化に向けた第一歩を踏み出しているといえます。
3. コスト削減のため必要に迫られている
コスト削減を優先課題とする企業がある中、管理部門も例外ではありません。特に、人件費削減、外部委託の見直しといったコスト削減を実現するため、RPAや業務自動化ツールの導入が進んでいます。
このように、組織の方針として限られたリソースで高い業務効率を実現することが求められており、管理部門の関心が高まっているのです。
管理部門でのPower Automate活用法
ここからは管理部門にとって役立つPower Automate活用法をご紹介します。
Power Platform製品群で完結するパターンと、サードパーティの管理系ツールとの連携パターンに分けてご紹介します。
ぜひ参考にして下さい。
Power Platform製品群で管理業務を一元管理する例
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業務カテゴリ | 課題 | あるべき姿 | 使用ツール | 実現方法 |
---|---|---|---|---|
経費精算の効率化 | 経費申請・承認が手作業で煩雑 | 経費申請・承認が自動化され、支出データをリアルタイムで把握可能に | Power Apps Power Automate Power BI |
・Power Appsで経費申請フォームを作成 ・Power Automateで承認フローを自動化し、上司に通知 ・Power BIで支出データを可視化 |
契約書管理 | 契約書の更新期限の管理が漏れがち | 契約書の状況や更新期限をリアルタイムで把握でき、期限切れを未然に防ぐ仕組みが構築される | Power Apps Power Automate SharePoint Power BI |
・Power Appsで契約情報管理アプリを構築 ・契約書をSharePointに保存し、リンク管理 ・Power Automateで更新期限リマインダーを送信 ・Power BIで契約状況を可視化 |
勤怠管理 | 勤怠データの集計や承認が手間 | 従業員が簡単に勤怠入力でき、リアルタイムで勤怠データを集計・分析できる仕組みが整う | Power Apps Power Automate Power BI |
・Power Appsで出退勤入力フォームを構築 ・Power Automateで休暇申請の承認プロセスを自動化 ・Power BIで勤務時間や欠勤率を分析 |
業務マニュアル管理 | マニュアルが分散していて検索が困難 | 必要なマニュアルを一箇所で簡単に検索・閲覧でき、更新時に全員へ共有される仕組みが構築される | Power Apps SharePoint Power Automate |
・Power Appsで業務マニュアル検索アプリを作成 ・データをSharePointに保存 ・新マニュアル追加時にPower Automateで通知 |
サードパーティの管理系ツールとの連携例
経費清算ツールとの連携例
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活用シナリオ | 連携内容 | メリット |
---|---|---|
データの自動取得と統合 | Power Automateを使って、経費精算ツールからデータを定期的に取得し、SharePointに保存 | ・他の業務データと統合し、経費データを一元管理できる ・データの手動転記が不要 |
レポートの自動作成 | Power BIで経費データを可視化し、部門別・期間別の支出分析を自動で作成 | ・分析レポートを関係者にリアルタイムで共有可能 ・無駄な支出やコスト削減ポイントを迅速に特定 |
承認フローの統合 | Power Automateを使い、経費承認リクエストをMicrosoft Teamsに自動送信し、Teams上で承認可能にする | ・経費承認フローがメールベースからTeamsベースになり、迅速化 ・ツールを切り替える手間を削減 |
カスタムアラート機能 | 高額経費や特定カテゴリの支出に対してPower Automateでアラートを設定し、管理者に通知 | ・不正や異常な支出を早期に発見可能 |
勤怠管理ツールとの連携例
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活用シナリオ | 連携内容 | メリット |
---|---|---|
勤怠データの分析・可視化 | 勤怠ツールから出退勤データをPower Automateで取得し、Power BIで可視化(例: 残業時間や休暇取得状況のダッシュボード化) | ・従業員の労働状況をリアルタイムで把握可能 ・部門ごとの生産性の分析が容易に |
カスタム通知の設定 | 勤怠ツールからのデータをもとに、長時間労働や休暇未取得者に自動通知を送信(Power Automate) | ・法令順守(労務コンプライアンス)をサポートし、従業員の健康管理を強化 |
休暇申請プロセスの統合 | 勤怠ツールの休暇申請機能をPower AutomateでTeamsやOutlookのワークフローと連携 | ・休暇承認の手続きが迅速化し、申請の見落としを防止 |
おわりに
アンケート結果から、Power AutomateやPower Automate for desktopの利用が広がっている背景には、リモートワークや業務効率化のニーズがあることが分かりました。また、管理部門の参加割合が増加しているのは、DX推進や業務効率化の一環としてツールの利用が進んでいることを示していることも分かりました。
デロイトトーマツ ミック経済研究所によると、ローコードプラットフォームソリューション市場の2025年の市場規模は3,200億円になると予測されており、2019~2025年度までに年平均成長率(CAGR)15.3%で推移すると見込まれています。
今後も市場の見通しは明るく、ローコードプラットフォームは企業がDXを推進するための重要なソリューションになると思います。

※引用元:i Magazine(2022年)
今後もPower AutomateやPower Automate for desktopを活用することで、企業全体の生産性向上や業務効率化をさらに推進されることを願っています。
この記事が、導入を検討している企業や部門の方々にとって参考になれば幸いです。
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