■ 業務自動化のすすめ/RPA推進の秘訣 ■
● RPA推進や教育、運用に必要な文書類とは
関係者が活動内容を把握するために文書は必須です。RPA推進の視点から、利用者向け、支援者向けなど多種ありますが主要なものについてポイントを抜粋し、例(案)として記述します。また各文書は基本的に推進チーム側で作成します。
<ご検討・ご相談ポイント>
- 文書種類と用途
- 文書作成方法
- 教育受講・運用ガイド
<受講者向け構成案>
はじめに:学習の目的、目標、対象など認識してもらう
学習レベル:基本から応用の構成、順序など
学習環境:教材や製品利用について、申請、e-ラーニング利用など
学習ルール:手続き、受講ルール、注意点など
困った時は:問題点、疑問点の解決方法、問い合わせ先など
学習プロセス:一連の学習プロセスを図式化、見える化<支援者向け構成案>
はじめに:教育支援の概要やレベル、スタンスなど認識してもらう
運用計画:教材や仕組みの改良や変更計画、説明会実施など
運用プロセス:定期・非定期作業の手順など
ノウハウ蓄積:支援におけるノウハウ蓄積、他と共有
運用報告:学習状況、利用者状況、課題や実績報告など
支援プロセス:一連の教育支援プロセスを図式化、見える化 - シナリオ開発ガイド
<開発者向け構成案>
はじめに:開発における文書の目的、用途、対象など認識してもらう
社内ルール:自社としての承認や禁止事項、セキュリティの注意点など
開発の基本:製品マニュアル内容から主なポイント、それらの使い方など
知っておくと便利:熟練者のノウハウ、要領、サンプルシナリオ、注意点など
開発プロセス:一連の作業プロセスを図式化、見える化 - シナリオ運用保守ガイド
<開発者向け構成案/自身で運用保守を行うケース>
はじめに:シナリオ実行、保守の目的、用途、対象など認識してもらう
社内ルール:自社の実行時の承認や禁止事項、セキュリティの注意点など
運用の基本:シナリオ実行のポイント、方法など
保守の基本:インシデント対応、シナリオ変更管理、記録など
困った時は:問題点、疑問点の解決方法、問い合わせ先など
運用保守プロセス:一連の運用、保守プロセスを図式化、見える化
ノウハウ蓄積:運用保守におけるノウハウ蓄積、他と共有<支援者向け構成案/全社支援や運用保守を請け負うケース>
はじめに:運用保守支援の目的、担当業務、対象など認識してもらう
サービス概要:支援内容(定期・非定期)、対象、サービスレベル、体制など
運用保守環境:サービス環境、インフラ管理と支援など
運用支援プロセス:支援プロセスを図式化、見える化
ノウハウ蓄積:運用保守におけるノウハウ蓄積、他と共有
管理項目:運用保守業務の管理全般(体制、会議や承認、工数など)
運用報告:運用保守状況、推移、課題や実績報告など
● 文書化、公開、更新における注意点
文書化は社内のテンプレートや様式に沿って、特に初心者へ分かり易くすべきです。また、一般的なマニュアルのように「基本と応用」「はじめにと詳細」といった文書分割も効果的です。
作成した文書類は更新が欠かせません。タイムリーに更新ができなくなると徐々に利用されなくなり、不要なものとなってしまいます。
またガイド類は、初期段階では必要不可欠ですが、慣れてくると日々読む必要がなくなってきます。慣れた人や長く利用している人向けには「重要事項チェックリスト」の類を提供して、ミスやエラーを防ぎ、内容やルールから乖離しないよう支援することも必要だと考えます。
● 標準化について補足
活動や支援を「標準化」することで効率化し、無駄なく、負荷なく、初めての人でもスムーズに進めることができるようにすることは、大きな効果を生みます。結果的に業務コストを抑え、生産性を向上することにつながります。
「自社の進め方・方法を明確にする」「文書やテンプレートを提供する」「内容を指導・教育する」という3本柱は非常に重要です。
■ RPAツール/製品のあれこれ ■
以下の内容は、WinActorの FAQページ でもご確認いただけます。
NTTデータ社の製品「WinDirector」を実際に利用するという観点から、機能面のことではなく使い勝手など利用面についてご説明します。弊社で確認した部分について一例としてポイントなどを挙げていますが、実際には各社各様の利用方法をご検討ください。
<ご検討・ご相談ポイント>
- WinDirector導入と支援
- WinDirector運用保守支援
● WinDirectorの設定や運用準備について
上記図のように利用者は「システム管理者」「ユーザー(実行権限有)」となります。
まず設定や運用環境を整備するのは「システム管理者」で、一連の操作や運用状況を監視する役割があります。
「ユーザー」はシナリオを開発した人、或いは実行を担当する人になり、開発したシナリオのWinDirector登録とジョブ実行予定の設定を行います。
方法としてユーザーの役割をシステム管理側で受け持つことも一案です。その場合は、開発と動作確認済のシナリオはユーザー側で責任を持ち、登録からジョブ設定までを管理側で行うことになります。管理側で一括して運用を担当するため、標準化や整合性を取ることが容易で、WinDirector上の基本操作や承認作業などの負荷やミスを削減できるでしょう。
補足ですが、シナリオをWinDirectorへ登録した時、WinDirector上で一度実行テストを行った方がよいでしょう。開発環境とWinDirector環境が異なることで発生するエラーを発見できます。
またシナリオ開発において、運用向けに共通的な社内ルールを付ける場合はそれを徹底します。一案ですが、シナリオ内エラーハンドリング方法、エラー時や終了時のメール送信方法、シナリオの終了方法、セキュリティ遵守方法などを統一する、などがあります。
● 日々の運用について
WinDirectorではロボット状態やジョブ一覧画面で結果を確認することができます。ただ管理者がそこで都度確認するのではなく、通常はシナリオ内に終了処理として関係者へメール送信すれば、即座に一斉に連絡できます。
エラー時は何らかのインシデント対応を行うこととなります。前述のように予めシナリオ内でエラーハンドリングを組み込んでおき、エラー箇所、エラーメッセージを関係者へメールする方法をお勧めします。より早く対応できることでしょう。経験上最も効果的なことは、エラー時の処理画面キャプチャで画像を保存することです。それを見るだけで簡単に原因を把握できることが多々あります。
WinDirector側でジョブエラー発生時に停止させ、画面で実行ロボ状態確認やジョブ一覧で結果を紹介することができますが、シナリオ内で必要情報を出力させる方が詳細も分かり易いと思います。またその場合は課題もあります。一つのジョブエラーで実行ロボが停止すると、次に予定されているジョブが保留になりますので、それを避けるためシナリオ内でエラーハンドリングをしたら正常終了と同様にジョブを終わらせることをお勧めします。後続のジョブを止めないための工夫です。
発生したエラーはエラー管理表を用意し、都度記録しておくことをお勧めします。過去のエラーシナリオの状況、エラー箇所、対策を検索することができ、インシデント対応負荷を抑えることが可能になります。
こうしてみると「運用保守」と「シナリオ開発」の連携がいかに大事か、シナリオ開発時点で運用の事も考慮しておくことが重要であることがよく分かります。
● 利用効果について
基本的に運用作業が自動化されるため、日中でも夜間でも実行処理自体にかかる時間が削減できます。
通常シナリオの実行には、対象シナリオを保存場所から呼び出し、入力や参照データを準備または確認して実行するという作業があります。10分や20分くらいは必要になり、実行頻度が高いものや本数が多いと工数も積もります。WinDirectorによる運用でそれらの削減効果も生まれます。
また即時実行が必要なものや単発で臨時に実行なども、簡単なジョブ登録ですぐに行うことができます。
補足ですが、WinDirectorの実行結果はダッシュボード画面で推移等をグラフなどにより照会できますが、別途シナリオの出力するログデータを使ってExcelのピボット機能などで独自に出力できるよう作成することも、自在にデザインできて分かり易く、運用保守報告にも利用できます。
■ RPAのトレンド/RPAはいつまで続く? ■
● RPA利用は低迷するか、更に増加するか
RPAの市場に関しての将来性ですが、どのレポートをみても成長以外は確認できないのでほぼ間違いなく広がるとみてよいと思います。
世界的な市場成長予測をみると、2026年までに約27.7%(他レポートで予測が大きい物は35%近い)のCAGR(年平均成長率)
で成長すると予測されています。特に小売業で自動化促進が加速され、コロナ禍の影響や電子商取引の急激な成長がRPA市場を押し上げる重要な要因です。(コロナ禍でネット販売需要が拡大、電子商取引急成長は取引インプットデータのデータ連携が容易、等々)
今後全世界における高伸び率エリアとしてアジア地域は高い予測です。日本国内を見ても革新的及び標準化されてRPA導入がしやすい環境整備がされている企業はまだまだ多くない状況と考えていますので、マーケットの拡大はイメージしやすいです。もちろん一部主要な業務や費用対効果(CP)が高い業務に向けては自動化されておりますが、CPが低い業務に向けてのアプローチはまだまだ道半ば、もしくはこれからの課題とされています。
RPA主要ベンダーとしても予測では買収や協業で統合に向かうとされています。既存市場のキープレイヤーである3大メーカー(AA、BP、UI)は資金力があるため統合する側となり、人工知能(AI)、機械学習(ML)、プロセスマイニング等の強い企業を買収したりしてトータルソリューションパッケージ化を目指す準備が加速しています。
新規市場参入としてはMicrosoftがRPA企業を買収しMS365ラインナップに加えたように、元々資金力があり既存サービスのバリュー向上が図れる企業同士の協業やM&Aが海外では随時発表されています。直近では「会話型サービス自動化(Conversational Service Automation:CSA)」で急拡大しているグローバルリーダ企業「ユニフォア」が、コンタクトセンター向けPRA製品市場の主要企業である「JACADA」を今年の7月買収することを発表して大きな話題になりました。
● 今後のRPAツールはこう変わる
他のレポートでも触れていますが、現在日本国内のサービス提供主要会社はガートナーが提唱する「ハイパーオートメーション構想」に乗って、前述したように技術力を持つ企業を買収しながら全方位に向けて製品ラインナップを提供できるようになってきています。ハイパーオートメーションとは、自動化できるものは全て自動化すべきだという考え方です。ハイパーオートメーションは、莫大な費用と広範囲の問題をもたらしている、合理化されていないレガシーなビジネス・プロセスを持っている組織こそが推進すべきものです。
ハイパーオートメーションが出来上がれば、今までCPが伴わず自動化が難しかった領域までも全体最適の観点やRPA化するにあたって阻害されていた作業工数消滅が見込めることから、業務ユーザーも意識せず業務の自動化がどんどん推進される形になり、会社組織の生産性向上がもっともっと進むことが期待されます。
併せて汎用的なRPA製品の他に、業務特化型RPAがより広がっていくと思われます。主要業務アプリ(CRM、ERP、CS、等々)の中間処理やイレギュラー処理は、ある程度パッケージ化及びAI、MLが活用しやすい仕組みが組み込まれている製品が業務再設計やシステム設計が容易なため、導入まで期間を短縮できるメリットがあります。ただ日本市場は海外市場と比較しても特殊なケースが多いので、どのように各企業がアプローチするかは興味深いです。
● 一つのRPAを使いこなすか、複数を使い分けるか
ニーズをかなえられる機能があるのであれば、当然一つに統合した方がデータ連携、管理面、運用、技術者育成等の複数観点からコストメリットは大きいと思います。RPA製品ライセンスは様々みて高いものを念頭においても、人件費よりは大きく下回るものが多いため、可能な限りRPA導入/運用における副次的な作業工数を抑えることが全般的なコスト削減になると思います。
ただし中・長期的な目線で見て既存製品では自動化領域の拡大や教育、体制構築等が難しい場合は、現状に即した製品を導入することは仕方がないですし、日本企業の多くはそのような選択を行っています。それらを連携するためにETL(Extract/Transform/Load)のようなものがありますし課題解決方法も複数ありますが、結局コストパフォーマンスの話になるいたちごっこなのでここでは割愛します。
上記から結論として、最適解の提示は企業によって違う・・・という詐欺のような形になってしまいますが、現在複数製品の導入を検討している企業様へ一つのご提案です。まずは既存導入している製品を使い続けるために必要な施策を洗い出しましょう。そしてその施策の実現可否を確認すれば、別目的で別製品を導入するか変更するか結論は出ると思います。本音のヒアリングが難しそうであれば弊社もご支援出来ます!